小型の漁船を操縦したい、モーターボートに乗りたい、水上オートバイクに乗りたいという方は、小型船舶免許が必要となります。
小型船とは総トン数20トン未満の小さな船舶を指しますが、河川や海も公共のものですから、いくら小型の船といっても免許が必要となる訳です。
小型船舶免許は平成15年6月以降「小型船舶操縦士免許」が正式名称となっています(当サイトでは、小型船舶免許と呼んでいます)。
国土交通省の資料によると、令和2年3月末で約363万人の人が小型船舶免許を持っています(なお、自動車の運転免許証保有者は令和元年時点で約8,216万人です)。
このページではそれぞれの免許の違いや、旧来の免許区分である3~5級はどうなるのか、免許なしで乗れる船はあるか等について書いていきたいと思います。
なお、プレジャーボートに関しては一定の要件のもとで小型船舶に含まれます。
それぞれの免許の違い
「小型船舶操縦士免許」は、以下3つの区分に分かれます。
- 一級小型船舶操縦士
- 二級小型船舶操縦士(更に、湖川小出力限定区分もあり)
- 特殊小型船舶操縦士
それぞれの区分で航行区域や操縦できる乗り物が異なります。
免許の区分 | 説明 |
一級小型船舶操縦士 | 海岸から5海里を超えて(外洋にて)無制限で操縦ができる。
ただし、沿海区域の外側80海里を以遠となる場合は制限あり。 |
二級小型船舶操縦士 | 海岸から5海里までの海域を操縦できる。
ただし、18歳未満に関しては、ボートの大きさが5トン未満に制限される(若年者限定)。 |
二級小型船舶操縦士(湖川小出力限定) | 一部海域も可だが、湖や川における航行に限定
また、操縦できるボートも総トン数5トン未満、エンジン出力15キロワット未満に限定。 |
特殊小型船舶操縦士 | 水上バイク(オートバイ)の操縦ができる。また、湖岸や海岸から2海里までの水域での操縦に限定。 |
湖川小出力限定については、湖や川で釣りをして遊ぶイメージです。
なお、免許証のイメージは以下の通りです。
このように、1級、2級、特殊と区分が違っても免許証は1つとなり、区分が併記されることになります。
区分のステップアップもできる
まず2級を取ってみてから様子を見て1級にステップアップする、というようなこともできます。
2級(旧4級)から1級へのステップアップは実技試験が免除され、1日の学科講習と学科試験のみとなります(身体検査はあります)。
また、2級1海里限定(旧5級)から1級へのステップアップについては、2日の学科講習が必要となりますが、実技なしで学科試験と身体検査を受けることになります。
2級1海里限定(旧5級)から2級へのステップアップも可です。
18歳未満でも取れるって本当?
普通自動車免許の交付時期は満18歳、自動二輪は満16歳ですが、小型船舶免許の場合も似たような考え方がとられています。
ただし、受験資格を得る時期と免許交付される時期が異なりますので、気を付けて下さい。
免許区分 | 受験資格 | 交付時期 |
一級小型船舶操縦士 | 満17歳9か月 | 満18歳 |
二級小型船舶操縦士 | 満15歳9か月 | 満16歳※ |
二級小型船舶操縦士(湖川小出力限定) | 満15歳9か月 | 満16歳 |
特殊小型船舶操縦士 | 満15歳9か月 | 満16歳 |
※ただし、満18歳までの間は「若年者限定」となり、5トン未満のボートのみ操縦可。満18歳になった時点で自動解除されます。
旧免許にあった3~5級はどうなったの?
小型船舶免許の区分は従来と変更されており、平成15年6月以前の1級から5級までの5区分から、現在の3区分に変更されています。
以下、これまでの改正の流れと、従来の区分との比較表です。
平成15年5月以前 | 平成15年6月~平成16年10月 | 平成16年11月以降 |
1級 | 1級 | 1級 |
2級 | ||
ー | 1級5トン限定 | |
3級 | 2級 | 2級 |
4級 | 2級5トン限定 | |
4級(湖川小出力) | 2級(湖川小出力)限定 | 2級(湖川小出力) |
5級 | 2級5トン限定・1海里限定 | 2級(1海里限定) |
ー | 特殊小型 | 特殊小型 |
このような改正は、小型船舶免許の根拠法が「船舶職員法」という船舶を職業として利用する人向けの法律であり、もともと大型船と小型船の区別ですら曖昧であったことが背景にあります。
元々想定されていなかった趣味やレジャーでの船舶利用が進み、水上バイクの事故などが起きるようになった状況に合わせて法律改正が行われることで、現在のような形なったのです。
免許なしで乗れる船はある?
平成15年6月から以下の要件を満たすボートは免許が不要となっています。
1.長さが3メートル未満であるもの(登録長)
※「登録長」は、概ね「船の全長×0.9」となります。
2.推進機関の出力が1.5kw(約2馬力)未満であるもの
3.直ちにプロペラの回転を停止することができる機構を有する船舶、または、その他のプロペラによる人の身体の傷害を防止する機構を有する船舶
これはいわゆるミニボートと言われますが、「2馬力ボート」または「船舶検査・免許不要艇」として、インターネット通販でも船外機付きのものが10~30万円程度で売られています。
しかし、その小型という特性故に事故に遭いやすいという問題があり、海上保安庁の管区海上保安本部からも以下のようなポイントで注意喚起がなされています。
ミニボートの危険性
- ルールやマナーを知らないまま運転してしまう。
- 小型ゆえに気象(波・風)や他船の航走波の影響を受けやすく、転覆して海上に投げ出される危険性が高い。
- 小さく高さも低いことから、他の船舶から衝突される危険性がある。特に、夜間が危険。
- 出力が小さいことで、潮流に流されて海岸へ戻れなくなる危険性がある。
- 安定性が悪いため、波や他船の航走波による揺れで、海中転落が起きる。
このように、ミニボートは免許や検査なしで乗れる反面、自分の命を危険に晒してしまいます。
海は気候による変化が非常に大きく、陸と比べてリスク要因が非常に多くあります。車道を子供用の三輪車で走るようなものです。是非、気を付けて下さい。